理科の先生



ふとした時に、何度と無く思い出す、中学時代のある教師がいます。(果たして彼が実在していたかは、もはや定かではありません。あるいは僕の想像の産物かも)その、特段見た目が良かったわけでもない教師は、僕たちに理科を教えていました。いつも着ていた白いコート、そしてコーヒーと煙草の匂い。僕は、コーヒーと煙草が嫌いでした。それらの匂い、ことさら二つの混じった匂いは、その時軽蔑していた大人たちの全てを象徴しているかのように思われたからです。

未だに、コーヒーと煙草は駄目です。けれど、その教師はとても魅力的に見えました。別に好きだったとか、どうのこうの、ではなくて、どちらかと言えば単純で少し歪んだ憧れ。そして、漠然とした思春期の性的な白昼夢。その教師も他の大人と同じ匂いでしたが、何かが違っていたのです。もしかしたら、あのコートのせいかもしれない。そう思った僕は同じコートを購入し、それを羽織って煙草を吸い、コーヒーを飲みました。そしたら、お腹を壊してしまいました。