無題 (断片)



4、5年ぶりに実家を訪ねた時、あるジグソーバズルがすぐに僕の目を惹きました。古い、黄色く変色したバイエルンの刺々しい城。未だに、このパズルを完成させた時の事を覚えています。僕は10か11才で、母は不在でした。たしか、入院していたか、それともただ単に出かけていただけかもしれません。従姉妹と一緒に、一日かけて仕上げましたが、いくつかのピースは明らかに力ずくではめ込まれています。ともあれ、僕らはそれを完成させる事ができました。

このパズルはその後、家の階段の踊り場にかけられ、家族は何時もその前を通るのにも関わらず、いつしか忘れられてしまいます。母の不在を象徴する静かなリマインダー。

何年も経たあとにそれを見た僕には、それが不思議な輝きを放っているようにも見えました。初めて、美しいものとして認識しました。そして、急にそれを壊したいという衝動に襲われ、バズルをひとつひとつの断片にもどしました。