無題(あの夏)


本棚のすみに置かれた、何枚かの夏の写真。去年の夏だったか、一昨年か。それははっきりとは覚えていません。アルバムに入れられる事もなく、適当に纏められ伏せられた白い裏面には、コダックローヤルのロゴと、よくわからない数字とアルファベットが並んでいます。観て、と要求されるようで、時々とりだして一枚一枚ゆっくりめくってゆきますが、その度に記憶が冷めてゆくような感覚を覚え、結局つまらなくなって放り出してしまいます。それなのに、裏返しの写真の白い紙面から、まるでお化けのようにそのときの記憶が立ち現れます。後ろから光を当てて透かし見た像のように、おぼろげながらも確かな感情を持って語りかけてくる記憶。もう一度裏返してみたら、やはりそこには何もありませんでした。

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