無題 (最後の鍵)


アルミ
Dimensions Variable

子供の頃よく遊んだゲームには、最後の鍵という、世界中の扉を開く事ができるアイテムがありました。僕は鍵を持つ必要のない島に育ったので、鍵を連想させるものは何であれ、持っているだけでわくわくしたものです。

ポークランチョンミート(スパム)缶のオープナーもその一つでした。それらを持っているだけで、少し偉くなった気分でした。オープナーに巻きとられたアルミは鋭くて危険です。僕は興奮してそれらを強く握り過ぎたため、よく手のひらに切り傷をつくりました。「あぶない」と母に叱られました。不思議と痛みは覚えていません。鍵をもつというばかばかしい行為が、痛みを超越していたのでしょう。

日本に戻って来てから、よくポークランチョンミートを使うようになりました。缶を開ける度に、最後の鍵のことを思い出します。

一度、それを強く握りしめてみましたが、怖くなってすぐ力を緩めてしまいました。手のひらに傷がつくのは嫌だし、なにより鍵はもう多すぎる程持っていて、これ以上増えても重いだけです。