無題 (放す)



自分のベッドルームの壁の一つ(そこにあったもの)をそのままギャラリーの壁に移し、その後全てを取り除き、形跡だけ(コルクボード、クリップ、押しピン、テープ)を残しました。取られたものは、みな床の段ボール箱に入っています。かつては僕のベッドルームの一部であったその壁には、故郷の島の写真や、いくつかのスナップ写真、自分史上一番良く撮れたポラロイド写真、はがき、手紙、カード、敬愛する人々の写真や切り抜き、落書き、覚え書、そして何故そこにあるのかも解らないようなものまで、引っ越してから現在(2006年11月)に至までに蓄積した数多くの記憶が所狭しと貼付けられていました。 家という概念、記憶、そして僕たちを包む壁という、一見普遍で永続的に見えるもの。しかし、永続的なものなどあるはずもなく、壁は大体において薄っぺらい。こうする事で(矛盾は承知の上で)僕は、壁を、そしてこの壁の抱える記憶を永続させたかったのです。人は、特定のイメージにしがみつき、それが大切なものだと信じ続けます。しかしよく考えると、それはもう何も語りかけてはこない。全ては、鮮明なうちに保存、又は廃棄する事が望ましいと思います。古いイメージを放す、という事。