クィアジンを救え

Works | 2014年08月13日(水)

コレクション癖をもつ人々の中でも、私たちのようなクィアジン収集家のネットワークはニッチな立ち位置に存在している。私たちが請け合い、保存し広めようとしているのは、セクシュアリティ、ジェンダー、人種、文化、そして階級におけるマイノリティーの、さらに周縁で上げられた声に他ならない。70年代や80年代のレズビアンやゲイたちによる政治色の強い同人誌から、現在の障がい者によるクィア宣言やトランスジェンダーのためのガイドまで、クィアジンはさまざまな方法で数世代に渡ってひとびとを解放し、変化を促してきた。クィアジンは、クィアな革命における生き方、愛し方、政治、キャンプ性、ジェンダーの可変性、苦悩、そして憤怒を記録し、表明してきた。私たちは、クィアジンを本棚に差し込みアーカイブすることに全力を注ぐ。なぜなら、それらのページ上で読んだメッセージや目にしたイメージを信じているから。なぜなら、それらが私たちに見せてくれる社会を未だに信じているから。

ジンは、切実に声を上げようとする者や、自らの地平を拡げようとしている者に大きな自由を与え、交流の場を作り出す。ZINE制作の有機的な存続手段はまた、その弱さでもある。だからこそ、私たちはジンを集めることで、瞬発的で刹那的になりがちなジンのきらめき、その押し寄せては消える波をしっかりと受けとめる。私たちは歴史的文脈におけるクィアジンの居場所を守り、そして、時に迎合主義的になりがちなゲイやレズビアンの主流文化に対抗してゆく。政治や宗教の熱狂的信者たちは、常に本、論文、個人的な手記を「危険」であるとして破り捨ててきた。ラディカルクィアの人々が培ってきた集団的な意思を、その物語に加わりたいと願う存在の手が届く場所に保管することで、私たちは反逆精神を生存させ、これから先の世代に託してゆく。私たちなりの語り方で物語を存続させる。検閲の恐怖のない未来へと。

クリス・ワイルド

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